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堀文明の「次のトレンド・コンセプト」 5号



平日1000人、週末3000人を集客した伝説のカフェ

HILLS CAFE & BAR  2005

 

  

 2005年5月3日、六本木ヒルズ・ノースタワーにあった元日産自動車のショールームを利用して、次のテナントが入るまでの期間限定という「CAFE&BAR」がオープンした。

 その名は、「HILLS CAFE&BAR 2005」。この店舗は、森ビルとショット・コーポレーションの共同プロジェクトだ。

 このヒルズカフェは、実は春から夏場にかけての期間限定のオープンだから、とりあえず、ビア・ガーデンでもやってみようかという、という割と軽い気持ちでスタートした。

 残念ながら今年の7月23日で期間終了となりクローズしたが、最終的には、平日1000人、週末は2000人から3000人の集客を実現する怪物店となった。

 このヒルズ・カフェ「期間限定」ということを告知して集客したことは一切ないし、開催時期が短期間なので、媒体告知しても掲載された時は既に店は閉店してしまっている可能性があるという理由から、メディアへのPRも一切行っていない。

 今回は、ヒルズカフェ成功の要因を探ってみよう。




店内はもとより店外にもお客様で溢れていた

 

 ●過剰なコストは限りなく抑制!
   130坪の空間には3mほどの仮設バーがあるだけ


 このヒルズカフェは、期間限定ということでコストを極力を抑えた店舗づくりとなっている。

 130坪の空間には3mほどの仮設バーがあるだけ。オーダー・システムはキャッシュオンデリバリー。 店内に配置されたイス、テーブルもいたってシンプル。

 ディスプレイといえば、鉢に植えた木、壁面に積み上げた薪。プロフェッショナルなデザイナーのデザインではなく、スタッフの感性で装飾する。機材もほとんど持ち込みで仮設のDJブースと映像プロジェクターを設置。

 こうして、基本的な「お客様がお酒を飲む」という機能を中心におき、その他の部分にかかるコストは限りなく抑制した。

 ●店舗周りの環境を最大限に利用

 ヒルズカフェの表には、六本木通り沿いから見える大きな植え込みのガーデンがあるが、その植え込みを見ながらくつろげるガーデン・テラスを店舗前に用意した。

 最近では、自然を上手く店舗環境の一部として取り入る飲食店は多い。この自然を上手く利用するという戦術は、自然が希少なエリアでこそ、その真価を最大限に発揮するのだ。

 そういった狙いから最も都市化された街であえてガーデン・テラスを作るという狙いは見事に的中した。

 いわば「オアシス作戦」。朝から晩までパソコンを目の前に格闘する六本木ヒルズ界隈で勤務する外資系企業のビジネスマン、OLが、毎晩,18時を過ぎたあたりから、ヒルズ・カフェのテラスを埋め尽くす。彼らがスタンディングのまま、コミュニケーションにいそしむ姿は圧巻だ。

 おそらく、彼らからすると、そこのガーデン・テラスは、「24時間都市六本木のど真ん中に出現したオアシス」のように映るに違いない。


 ●競合店舗の取りこぼしている顧客とニーズを狙え!

 新たに店舗を出展する際のポイントのひとつに、既存店との顧客の取り合いの回避がある。

 もちろん都市部に限った事ではないのだが、同じ顧客を狙った店舗展開をとるとお客様の奪い合いになることが多い。

 HILLS CAFE の競合店として想定されたのが、第3号でとりあげた、ハートランド。ハ−トランドに来店している、ヒルズ界隈で遊んでいる外人客をターゲットとすることが必要なことは、明白だった。

 ハートランドとほぼ同じターゲット層へ向けて店舗展開を図るためには、「ハートランドが取りこぼしている客層」、「ハートランドが充足しきれていない顧客ニーズ」を探求、開発していくことが重要となる。

 その点で、ヒルズ・カフェは、まさに、ハートランドがとりこぼしている顧客・二―ズを充足させることに成功した。

 それが「自然=ガーデンの中で、くつろぎたい・癒されたい」という願望であり「テーブルに着席してくつろぎたい」というニーズである。ちなみに、ヒルズ・カフェには170席のイスを用意した。



常時500人近いお客様が店内にいる風景は圧巻!


 ●集客の仕掛けより、客単価UPの施策よりも、大切なこと!

 このヒルズカフェは、ターゲットとしている顧客層の二―ズが見えており、彼等へ向けてPRしていくこと、DJ装置や映像の導入で想定顧客がリラックスできる環境を整備、イベントなどを開催していくことで、ある程度までは行ける自信はあった。

 が、この店がここまで流行るとは誰ひとり(私も含めて)予想していなかったのだ。

 唯一、試みたPR戦略は5月25日に開催した、事実上のお披露目パーティーとなった「美女と野獣へのオマージュ」の一回のみ。

 ミニマル・ミュージックの巨匠フィリップ・グラスの来日記念公演前夜祭パーティーを兼ねて開催した。店は大爆発。以降、連日お客様が途切れない店舗となった。

 ヒルズ・カフェが成功した要因は、ヒルズ・カフェが、一流のシェフによる美味しい料理を提供したからでもないし、最高のサーヴィスで顧客をもてなしたからでもない、ましてやスタイリッシュな内装・空間が彼等を魅了したからでもない。

 それは、六本木ヒルズ界隈を生活・仕事・飲食・遊びの拠点としている彼等に、ハートランドが充分に与えきれなかったものを提供したからである。

 彼らが「癒されるオアシスのような空間で、コミュニケーションしながらお酒を飲みたい」という「ニーズを充足させる場」を提供したからなのである。

 まさに六本木界隈の人々が心待ちにしていたオアシスを提供したのである。偶然、そうなったのではなく、狙ってそうなったのである。

 換言すれば、ヒルズカフェは、ヒルズで働く多くの人達のニーズと、お客様のお店に対する期待感が店を作り上げたといっても過言ではない。

 お店を求めるお客様がいて、そのお客様を集めることが出来れば、自然とお店になる。店舗づくりにおいて大切なのは、集客の仕掛けや、客単価upの戦術でもなく、既存店に満足していないお客様のニーズをいかにタイミングよく、的確に提供できるかだ。

 そして、そこに集まるお客様のパワーを利用していくことだ。

 ヒルズ・カフェの事例で、大切なことは、お店側のおしつけがましいサーヴィスや商品提供ではなく、お客様の二―ズを嗅ぎ取り、それをうまく飲食という場で充足させてあげる場所・環境を提供することである、ということの好例といえる。



 

   店舗プロデューサー 堀 文明

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