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「人に事うるを知る者にして、然る後に以て人を使うべし」『孔子家語』にある文句だが、要するに、人に従い仕えるということがわかっている者であって、はじめて人を使うことができるということである。
また、『近思録』という本には、「人の上にたって権力をふるうのはたやすいが、人の下で地味に働くことはむずかしい。しかし、人の下で働けない者は、部下を使いこなすことはできない。
下っ端で苦労した人でなければ、人に使われる者の気持ちがわからないから、人の心を掌握できない」(人の上たるは易く、下たるは則ち難し。然れども下たる能わずんば亦下を使う能わず)とある。
私のように現役六十年ともなると、仕えた人はトップ七人、中間管理職の上司を加えると何十人にもなる。そのため、仕える者の苦労は身にしみるほど味わっている。
それだけに、上に立つ者の、人を用いる上手下手がよくわかる。このトップのためなら、いかなる苦難もいとうまいと思いこんでしまうほど人生意気に感じてしまう人もあれば、万金を積まれても快しとしない者もいた。
このように感じたのは私一人ではない。周囲の多くの使われる者の評価が異口同音であってみれば、私の偏見ではなさそうである。しかも、仕える者の評価はおおむね正しいことが事業業績に現われてくる。よく用いる上司の業績は常に輝かしいものであるが、用い下手のそれは次第に下降してくるからだ。
事業経営にしても、人をよく用いる者は、まず人を選び、教え、育て、後につづく者を絶たない。人をよく用いようとしない者は、選ばず、教えず、育てずして、後につづく者を絶つ。これで企業の命脈をも絶つことになる。古今東西の歴史は、国家の興亡、事業の盛衰、人の勝敗を伝えているが、そのわかれるところ、多くは人の用い方にあったといえよう。
功者、勝者は人を育て、あるいは求めて、よくこれを用い、人の力をフルに、さらには何倍にも活かして用いている。よく人を用いて大志をとげた例は枚挙にいとまなしで、現代の企業も例外ではない。
さらに、「善く人を用うる者は之が下と為る」という言葉が『老子』にある。つまり、上手に人を用いる者は、いつも相手に対してへりくだっている。下手にでて人の力を最大限に活用するものだ。権力をふるうだけでは人の力を最大限に引きだすことはできない。
これについて『孟子』は、「呼びつけできない部下をもて」とも説いている。師に足るほどの部下をもてということであるが、よく人を用いる者の共通点の一つでもある。
そうした考えから、「師厳にして道尊し」(師の尊厳が備わって、はじめて教えの道の尊いことが相手にわかる)といわれるとおり、人を用いる者自身が、自らを正し、厳しくすることでなければ真の用い方とはいえない。
本書はこの点についても多くふれたつもりである。国際社会は東西対立緩和によって、経済競争時代に入り、企業間競争はますます熾烈化してくる。労働力不足も加わって企業の存続は、人力をいかに効率的に活かすかにかかってきた。
人をいかによく用いるかが企業の命脈を保つ大きな課題となる。リーダーの真価は人をよく用いるか否かによって決することは、日に日に明確になるに違いない。本書出版に際し、日本経営合理化協会の皆様のご高配をいただきました。ここに厚くお礼申し上げます
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