「“KZ法”工場改善」まえがき
 

 ここ数年、世の中が変化するスピードが日に日に速くなっている。

 とくに日本の中小メーカーは、取引先の海外移転、国際化による価格競争の激化、少子高齢化による熟練技能の流出と人材不足、そして昨今の原材料の高騰など、否応なしに襲いかかる変化に対して、迅速にしかも的確に対応しなければ生き残れないという非常に厳しい環境に置かれている。

 そういった現状の中で、メーカー経営者は、これまで必死の覚悟で変わろうとしてきた。

 しかし現実には、「具体的に何から始めればよいのかわからない」「社内に人材がいない」「社員がヤル気になってくれない」「自分で指導できない」「何かをしようにもお金も時間もない」といったことで、対応できずに悩んでいる経営者が多い。

 一方、私はバブル崩壊後の1992年、大手自動車メーカーを辞め、念願だった改善コンサルタントして独立し、自動車部品、家電、食品、IT関連など、さまざまな中小メーカーの改善にかかわってきた。

 しかし、当初なかなか自分が思い描いたような経営成果があげられず、「いったいどうすれば働く人たちのヤル気を引き出し、経営に直結する大きな成果を上げることができるのか」を考え、悶々と暗中模索する日々が長く続いた。

 そういうなか、ある偶然がきっかけとなって、KZ法(全社的改善)という新たな改善手法を発見するにいたったのである。

 このKZ法とは、5Sを土台にするものの、従来の5S活動あるいはTQC活動やTPM活動などとはまったく違う、総合的かつ全社的な改善活動である。

 簡潔に説明すれば、「メーカーにおける会社全体の問題は現場現物にあらわれる」という考え方をもとに、まず社長が先頭に立って、社員と一緒に3時間の活動をおこない、それによって全社的な問題、たとえば、モノづくりはもちろんのこと、設計の問題、購買の問題、営業の問題、管理の問題といった経営全体の問題を顕在化させ、全員で現場現物を通じて、会社の問題を認識する。

 そして、その活動を一つの起爆剤として、部門間の壁を打ち破り、全社に高いモチベーションを湧き起こして、全員で経営成果に直結する全社最適の改善をおこなうというものである。 

 言葉でいうと、「何だそんな簡単なことか」と思う読者もいるかもしれない。しかし、私がこの手法を確立するまでに、なんと十数年の年月がかかったのである。

 いずれにせよ、今、中小メーカーにとって重要なことは、自力で生き残れる技術力や経営力を持ち、将来にわたって通用するような力を維持することである。

 言い換えれば、時代の変化に合わせて、自分で変革できる改善力を身につけることであり、そのためには、過去にない経営革新に取り組み、成功させることが必要である。

 そういう中で、本書はそれらの問題を解決する改善手法として、KZ法を中小企業のメーカー経営者に提案するのが目的である。

 ちなみに、KZ法はこれまでに40数社に導入し、その経営成果を追跡調査してきた。

 いずれの企業も、会社の問題を発見するだけでなく、参加者がイキイキと前向きに改善に取り組む高いモチベーションを生み出し、それによって会社の経営を大きく変える改善に結びつき、なかには導入後3年で10億円以上の在庫を減らし、リードタイムを3カ月から7日に短縮、さらに改善の副産物として特許を取得し、自分たちでつくった機械を販売するといった企業も出てきたのである。

 だからこそ、自信をもってKZ法をおすすめしたい。なにしろ初期投資コストはゼロ、最初の活動でかかる時間はたった3時間である。

 さらに本書は、このKZ法を本当の意味で理解していただくために、実際にKZ法を導入実施した3社の事例を映像資料として添付した。

 どれもぶっつけ本番の改善ドキュメンタリー映像である。

 このDVD映像を見ていただくだけでも、KZ法とは何か、そして、KZ法が目指すものが何かを感じ取っていただけると思う。

 とにかく、今後どんなに環境が変わろうとも、自らの強い変化対応力で生き残り、なおも勝ち進む中小メーカーが多く登場することが、日本の将来を支えると確信している。

 繰り返すが、変化の時代に大事なことは、どんな変化にも対応できる体質をつくっておくことだ。

 そういう意味では、このKZ法が、中小メーカーの一助となることを心から願うばかりである。
                  

  平成20年2月吉日

改善コンサルタント 柿内幸夫
 
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