武田哲男 顧客強く好かれる秘訣
顧客に強く好かれる秘訣・はじめに
はじめに

 「次もあの会社にぜひ発注したい」「やはりこのメーカーのものは間違いない」…どのような経済の変革期にあっても、顧客に好かれ、顧客が支持してくれる会社は、当然ながら堅実な業績を上げつづけている。
 ところが最近は「もうあの会社にだけは注文を出さない」「次は別のメーカーにする」と、顧客から見放される会社が急増している。いまどの業種・業態でも、規模の大小を問わず、顧客との接点となる現場が荒れに荒れていて、顧客の離脱化が急ピッチに進んでいるのである。
 さらに悪いことには、こうしたマイナス要素の渦巻いている現場の様子が、経営者にはほとんど知らされていない事実がある。私どもの調査では、現場のマイナス要素のわずか3%しかトップの耳に届いていないのである。

 とかく組織のトップの耳には誉め言葉ばかりが集まりやすい。確かに誰だっていやな話より誉め言葉の方がよいに決まっている。いやな話をして嫌われるより、良い話をして嬉しそうな顔をしてもらった方が無難だ。

 しかしその結果、会社が顧客から見放され離脱されて業績を落とし、その原因を不況のせいにしていたのでは経営不在である。

 ご承知のとおり、バブル経済の崩壊を境にして経済構造が大きく変化している。それも一過性ではなく基盤から構造的に変革しているのである。だから「過去の体験や経験が邪魔になる」「過去の習慣がマイナス要素になる」また、「今までの常識がむしろ裏目に作用することが増えた」という厄介な状況に直面しているのである。

 しかしそれでもなお、これからも変わらない常識がある。「顧客に好かれる会社」は業績を上げ、「顧客に嫌われる会社」は業績を下げるという当たり前のことが、これまで以上に極めて重要な経営原則となるのである。

 実は「今こそ新しい常識の時代」到来なのである。右肩上がりの経済成長時には、顧客に離脱されても新しい顧客を獲得することができた。よほどの失敗さえしなければ、新しい顧客が市場に次から次と湧いてくるかのように思えた時代であった。

 つまり既存客の離脱化よりも新規顧客の開拓に目を向けていれば業績を維持できたのである。しかしこれからは、新規顧客を獲得するにも、市場は縮小し時間もコストも以前とは比較にならない。

 苦労して他社の得意先や顧客を奪ったとしても、自社の既存客が次々に足下から離脱されたのでは、衰退化、消滅化しかないのである。新しい時代は、新規需要が右肩上がりに広がることはもはや期待できない。しかしその足下に、買い換え・リピート需要という巨大な市場が眠っているのである。

 そしてこの巨大市場を掘り起こすには、今までのような顧客使い捨て、顧客消費のやり方を、早急に抜本から改めなければならないのである。顧客に選ばれ、支持される『顧客に強く好かれる会社』にならなければ会社は存続すらできないのである。

 そのために重要なことは、「耳に痛い話」を顧客から聞くという当たり前の姿勢である。というのも実は顧客の発してくれるさまざまな苦情や不満は、顧客からのエール(声援)であって、もし顧客の苦情や耳痛い意見が伝わってこないようであれば、すでに顧客から見放された証拠と言うことができるからである。

 「顧客の声は天の声」であり「顧客からのプレゼント」として素直に耳を傾けその意見に全社・全組織をあげて取り組むことこそ何にもまして急がなければならない。

 この本では、「顧客不満足度調査」を中核に、そこから「顧客の感動や感激」を新たに生み出す具体的な経営戦略・戦術について事例中心に道案内をしている。

 「顧客不満足度調査」とは、これまでのCS活動や「顧客満足調査」の限界を超えて、本当の意味で「顧客から強く好かれる」ための具体的な要素を導き出すために、私のコンサルタント人生をかけて考案し提唱してきた実践的な経営ツールである。

 導入していただいた会社が、急速に業績を回復したり、他社の不振を尻目に快進撃されている様子をみて、その有効性と即効性をいささか自負している。理論だけでもだめ、さりとて体験・経験だけでもだめな時代である。そこで「なぜこうしなければならないのか」、さまざまな会社の実例をできるだけ多く交えながら、「顧客に好かれる秘訣」を一人でも多くの読者にご理解いただきたいと念じつつまとめた次第である。

 経営者はもとより、企業業績を支える幹部の方々のますますのご活躍とご発展のお役に立つ内容として活かしていただければ幸である。この本を著すに際し、読者の気持ちになって、妥協を許さず著者にアドバイスしてくださった日本経営合理化協会出版局長本間登美雄様の情熱とパワーに感服し感謝を申しあげる。


1999年初春 武田哲男
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日本経営合理化協会 出版局 TEL:03-3293-0041