中村天風 「心に成功の炎を」冒頭より

本文冒頭ページ(第一章 生きる心構え)

ごきげんよう、天風です。
さて、みなさんがこれから聞かれる話は、そこらで学者が説いている、ここらで識者が書いているというものじゃない。

 私、天風自身が、長い人生の中で体験したものをそのまま率直にあなた方に移す話なんであります。

 そういうと、はじめて聞かれる人は、生まれながらにして私が現在のように悟った人間だとおぼしめすかも知れませんが、どういたしまして、私は35歳までは、めちゃめちゃな人生に生きてきた男なんです。

 軍事探偵として、日清、日露の両役にご奉公し、戦争が終わると恐ろしい死病に取りつかれて、そして、せめて昔の心の半分の強さにもどりたいがために、世界を3分の2もさまよい、最後はとうとうインドに行って3年、それでも心というものの消息がわからないで、のたうちまわったという過去をもっています。

 その私が、中年以後、もう毎日が喜びの渦巻きの中で生きられるような悟りと自覚が得られるようになった。その今日の私の幸福を考えるとき、哀れな惨めな人生に生きている人々を、なんとかして自分同様の喜びにひたりながら生きられる人間にしてあげたいと思うのが、現在の私の寝る間も忘れない気持ちであります。

 ですから、どうしても私の話をわからせずにはおかないという気持ちで話こんでいきますから、あなた方もそれを感づかずにはおかないぞ、というような気持ちで、これから私の話をお聞きください。

 私の口から聞かれる言葉の中に、「はっ」と感じる言葉を見つけられない人は、結局、つかまえなきゃならないものをつかまえずに、桶にでっかい穴をあけて水を汲んでいたと同じ結果がくるということに気がつかなきゃだめですぜ。

 それだけ申しあげて、本題に入ります。
あなた方は、今までに「理想的な人生のあり方」というようなことをお考えになったことがあるかしらん。いかがですか?          

………以降省略

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