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「カネ回りがよい」とはどういう状況をさすのだろうか。
たまたま新商品や新商法が当たって、売れに売れて大儲けでき、厚い札束が、会社の金庫にも銀行の口座にも、社長の財布にも溢れていることを言うのだろうか。
たしかにそれはそれで、カネ回りがよい状況には違いない。おカネが手許にどんどん集まってくる日々は、社長にとってまさに至福のときであろう。
しかしあれほど売れていた商品がぱったりと売れなくなり、ライバル会社が新たな商法で対抗してきて売上がみるみる減ると、とたんにおカネが回らず窮屈になってあわてふためく。
これでは偶然の大儲け、神頼みの経営でしかない。
たまたま商品がヒットしたからカネ回りがよくなり、売れなくなったからカネが回らなくなる、さらに言わせてもらえば好況だからカネ回りがよく、不況になると悪くなるというのでは、ときの流れにまかせているだけで経営不在だ。
社長たるものは、いついかなるときにも、たとえ、ものが売れない時代でも、カネ回りのよい経営を継続しなければならないのである。
このごろ「キャッシュフロー経営」ということがしきりに言われている。
「キャッシュフロー」とは、何のことはない「カネ回り」のことである。
1990年の冷戦の終結により、社会主義体制の25億人もの安い労働力と安い土地や設備から生まれた格安な製品やサービスが世界中に流れ出した。日本の土地担保主義の金融制度は一気に崩壊し、これまでの土地や設備などの固定資産に頼るストック経営のやり方、資金の使い方では、おカネが回らず詰まってしまうことになる。このような時代には、「キャッシュフロー」、つまりカネ回りをよくするための経営対策が注目されるのも当然なのである。
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カネ回りをよくする大原則は決して難しいことではない。
古くはユダヤ商人や華僑がかたくなに守りつづけた鉄則であり、身近では、朝市のおばさんが今も毎朝実行していることである。
それは何かと言えば、「現金第一主義で、小さな元手をフル回転させて大きく稼ぐ」という「ゲンナマの高回転経営」に尽きる。
現金をモノに変えたら、寝かせずに即座に売り現金にする。その現金でモノを仕入れたらまた即座に売り切って現金にする。このくり返しによって稼ぐ。
しかもすべての元手は、利益を稼ぎ出すものにしか使わない。利益を稼いでいないと判断したら、売却損がでようと即座に始末して現金に換える。理屈は実に単純である。
トヨタ自動車は、売上約16兆円、経常利益1.5兆円(2003年度・連結)という、巨大企業にして同時に超高収益会社である。しかしこの巨大企業の経営原則が、朝市のおばさんの経営と同じだと言ったら、そんなバカなと納得されない方もいらっしゃるだろう。
しかし有名な「トヨタのカンバン方式」に代表されるジャストインタイムの経営は、高回転経営の見本のようなものだ。小さな元手を高速回転させつづけて強靭な財務体質を築き上げ、その強みが収益力をより増大させ、いつしか世界を代表する超優良企業が生まれたのである。
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「売れて儲かる商品・サービス」をお客さまに提供しつづけること、
「いかなる状況でもおカネが回る仕組み」を自社に用意すること、
この二つは、「カネ回りをよくする経営対策」の両輪である。
このうち顧客が殺到するような「売れて儲かる商品・サービス」をいかに確実に提供していくかについては、すでに前著『稼ぐ商品・サービスづくり』で詳説した。
本書は、残されたもうひとつの重要対策である「高回転経営」すなわち「いかなる状況でもカネ回りのよい経営」について、社長に必須の実務としてまとめたものである。
私は1972年に経営コンサルタントとしてスタートしそれから30余年間、さまざまな企業の盛衰にかかわってきた。その中から株式を上場する企業、売上1千億円を超える企業などが次々に現れたが、それらはひとえにそれらの企業を率いる経営者の手腕によるもので、私のお手伝いの成果などしれたものである。
ただ私のささやかな自負は、早くから企業経営における「カネ回りのスピード」を重視し、たとえ売上が減っても増益できる「カタ太りの経営」を提唱し実践して頂いたことだろう。そのためか長くお手伝いさせていただている企業は、何度か遭遇した不況をしぶとくくぐり抜け、他社が赤字で苦しんでいるときも、しっかりと利益をあげてきた。
たとえ不況のときでも、資金繰りの心配をせず、毎晩、枕を高くして寝ることができる。これもまた、経営者にとって至福のときではないだろうか。
「カネ回りのよい経営」は、社長が決意すれば必ずや可能なのである。
ところが社長にとってカネ儲けの話は好きでも、おカネにまつわる数字の話は理屈が多くて面白くない。しかもあまたの「カネ回り」関連書は、社長にとって実にむずかしい。
私は税務や財務などの管理畑出身ではないからか、専門家の書かれた資金や財務の本は、私とて難解、というよりほとんどわからないというのが実感である。
なんとか経営者にわかりやすく、しかも実務にすぐ役に立つ本にしたい。
そんな強い思いで本書を書かせていただいた。
そのため専門用語をできる限り少なくし、多くの実例をまじえて説明したつもりである。
専門家から見ればいささか強引な記述があるかもしれない。しかし私の年来の主張を、すべての経営者にぜひとも実践していただきたいためのことであり、お許しいただきたい。
本書によって、真実おカネに強い経営者がひとりでも多く増えることを念願しています。
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