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私が人蕩術(じんとうじゅつ)について本を書き始めてから、はや20年になりました。 これまで、私が一貫して説きつづけてきたことは、人生における成功とは、自分の陣営に「いかにして良き味方を得られるか」にかかっている。 他のすべては、瑣末(さまつに過ぎないということです。 かつて、司馬遼太郎が太閤秀吉を巧みに人の心をとらえる「人蕩しの天才」と言いましたが、水呑み百姓の子であった秀吉が、60余州の敵将の心を捉えて天下を平定できたのは、まさに秀吉の「人蕩しの力」であったといってよいでしょう。 そして、現代において無類の人蕩しを1人あげるとするならば、ホンダを築いた本田宗一郎ではないでしょうか。 氏は人心の機微というものを一瞬で察して、会う人会う人を自分の方へ魅きこんでしまう絶妙の才がありました。 それは宗一郎が亡くなった今でも伝説として語りつがれています。 ここで、みなさんに考えていただきたいのは、秀吉も本田宗一郎もズバ抜けて魅力的な人物ではありましたが、世間一般でいうところの優秀な人物ではなかったということです。 私たちは子供の頃から一生懸命勉強して賢い人になるよう教育され、本人も努力するのは当然のこととされています。 しかし実際のところ、成功している人たちを見渡せば、そういった努力はまったく役に立たないとまでは申しませんが、それだけでは事足りない、もっと大事なことがあるのも事実です。 それは何かといえば、要するに、成功する人間は他の人間を友とし、味方となし得るが、成功できない人間は自分の周囲を敵や無関心者によって囲まれてしまうということでしょう。 当然なことに、あなたがこの世で何か事を為そうとしたとき、必ず他の人間と関わらざるを得ない。 それは為そうとする事が大きくなればなるほど、他の人間の協力なしに成功できないのです。 このことは、そのまま事業経営にあてはまります。 経営者が思い描く夢や目標を現実のものとするには、経営者を支えてくれる部下たちの献身的な努力、協力なしには実現できません。 それ故に、本書『人蕩し術』は、読者に優秀な人物になるよう勧めるような本ではありません。 本書の意とするところは、ただただ、あなたが人に好かれ、多くの人を味方とし、それをもって人生の幸福あるいは成功への一助としてもらいたい。そのための最良の手段を、「人蕩し術」として提唱するものです。 ところで、本書は、これまで私が書いてきた「人蕩術」の集大成といえるものです。 とくに本書をまとめるにあたって、経営者の方々に理解されやすいように、太閤秀吉と本田宗一郎の事例を新たに書き下ろし、以前出版した『人蕩術奥義』『人蕩術極意』『人蕩術皆伝』(ともに致知出版社、絶版)の重要部分を抜き出して大幅に加筆訂正しました。 私としては、読者のみなさんが本書『人蕩し術』を活用されて、これまで以上の大きな成功と幸福を手に入れられんことを願ってやみません。 |
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2005年11月
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無能 唱元
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