天地自然の理から、大いなる実践哲学を説いた名著

二宮翁夜話(にのみやおうやわ)

「道徳を忘れた経済は罪悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である」幕末の大実践家、二宮尊徳珠玉の言行録、遂に現代語訳なる。現代経営者に「真の繁栄の道」を明示。

著者 二宮尊徳(にのみやそんとく)
村松敬司(むらまつけいじ)編著
形態 A5判(15cm×21cm)本文445ページ
発行 1995年1月24日
ISBN ISBN4-930838-82-7

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目次

まえがき
二宮翁夜話原本序
天の巻
  1. 天道と人道
  2. ものごとの輪廻のきまり
  3. 陰と陽、善と悪
  4. 心がまえ
  5. 理屈より実行地の巻商売のこつ
地の巻
  1. 商道の本意
  2. 近い欲、遠い欲
  3. 計画的に、確実に
  4. 臨機応変
  5. まごころの力
  6. 運について人の巻永く栄える法
人の巻
  1. 人の情と人間関係
  2. 倹と分度
  3. 推譲ということ
  4. 永安の道
  5. 経済道徳の融合
夜話原本あとがき
福住正兄解説
  1. 二宮尊徳の生涯
  2. 二宮尊徳の思想
  3. 二宮尊徳の影響を受けた経営者たち
二宮尊徳略年譜

まえがき

まえがき

 二宮尊徳(金治郎)は、歴史上まれにみる「再建の神様」であった。幕末のころ、六百十余の藩や郡村の財政危機を立て直し、大飢饉から多くの人々を救い、一農民の出身でありながら、ついには幕臣となって活躍した。

 身長六尺一寸(183センチ)、体重24貫(90キロ)、いかつい顔、まゆ太く胸厚く、見るからにエネルギッシュな風貌の持ち主であった。ところが、世間の尊徳のイメージは、この実像とあまりにも掛け離れている。

 だれにも、小学校の校庭にあった金治郎少年の銅像から、「やりたいことも我慢して、勤勉実直、質素倹約」という印象が強く残っているからである。尊徳は、禁欲主義を否定した人である。だれからも教えられず、大自然から実地につかみとった彼の思想は、人間の欲を認め、まわりと調和させながら、心も金も、同時に、豊かにする「実学」であった。

 徹底した合理主義と積極精神で、増産計画を立て、人心を収攬し、次々に藩や郡村を再建していく過程で、実生活に根ざした独自の思想を確立したのである。

 その実践思想は、明治になって、渋沢栄一、安田善次郎、豊田佐吉はじめ代表的な事業家に多大な影響を与えた。戦後も、松下幸之助や土光敏夫らの多くの名経営者が、二宮尊徳を再評価し、その事業経営に大きく活かした。

 彼は、日本的経営のまさに原点を示した、希有の巨人なのである。尊徳の思想を知るには、この「二宮翁夜話」を読むのが、いちばんよい。初版「二宮翁夜話」は、尊徳が再建の神様として活躍し、油の乗りきった時代の言行を、門弟の福住正兄が折にふれて筆記し、後にまとめられて、明治17年に出版された。

 全181話を通して、根源的なものの考え方、行動のよりどころをはじめ、商売の心得、人心の掌握などを、卑近な実例や体験談をまじえ、当時としては珍しい口語体で書かれ、現代に通じる不朽の教えを数多く示唆している。

 ただし口語体といっても、初版から百年以上経た現代では、一般の読者にとって、多少の読みにくさは、いなめなかった。そこで今回、執筆にあたり、とくに次の二つの点に留意した。

 第一に、これまでの「二宮翁夜話」は、初版以来いずれも「翁曰く」という形式をとっていたが、これを二宮翁自らが語るという一人称形式に改め、「飾らず、つくろわない」現代の語り口調としたことである。

 第二には、各章の配列を、現代の経営者向きに、大胆な編み変えをおこなった点である。ご参考までに各話の終わりに、(数字)で、初版の番号を付した。いわば「平成版=二宮翁夜話」の誕生である。

 本書によって、「二宮翁夜話」が経営者だけではなく、多くの読者にとって、ぐんと身近かなものになったのではないかと、ひそかに自負している。

 これからの企業経営者の進路決定に、本書がいささかの影響を与えることができれば、編著者の望外なよろこびである。

平成7年1月
村松敬司

 

二宮翁夜話原本 序

 わたくし翁のもとに7年おりましたから、おりにふれ、ことにふれ、翁の論説教訓をおききしたことも多かった。しかしながら、その大きな鐘を、ちっぽけなムチで打とうというのだから、その響きがかすかであるのはどうしようもない。

 そのうえ、私の耳はいわゆるザル耳で、道のこころの深遠なうまみは皆もれてしまって、残るはカスだけ。このようなカスだけを書き残すのは、道をまどわす恐れもあり、他人にはお見せしたこともなかった。

 しかし、ことし61歳になり、のこるよわいも多くないし、せめて清書しようと下書きしていたところ、親しい人たちが、印刷して本にしなさいと言ってくれるのだけれど、もとより才能なく力なく、ことに文章を書くことにうといのでお断りしたが、聞き書きのままで、飾らずつくろわない口語文のほうがいいと、求める声がやまない。

 いまは断ることばもなくなり、かくては、世にひろめる理由をひとこと添える次第です。

ふくずみまさえしるす

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